子育て相談のすゝめ
カウンセリングをしていると,時折,子育てのお悩みを相談されることがあります。
今回はこれまで相談されたことが多かった話題を中心に答えてみようかと思います。
一つの参考になれば幸いです。
①言うことを聞かないとき,どのように接したら良いでしょうか?
言うことを聞かないという場面がどのような場面で,親が子どもにどのようなことを言って,何を聞かせたいのか?ということを考えてみましょう。質問②にも通じるのですが,言うことを聞かないということは子ども自身の考えがあるということです。親とは違う意見を自分がもっていて,それとは違うことを言われて言うことを聞かないというのは当然といえば当然なのかもしれません。しかし,言うことを聞かない子どもに親はイライラとしてしまうものです。そんなときは一呼吸おいてから,子どもと接してみましょう。あまり親の言うことを聞かせようということばかりを考えすぎずに「聞きたくないときもあるよね」と自分にも子どもにも言ってみましょう。そうすると自分も子どもも次第に落ち着いて穏やかに接することができるはずです。
②イヤイヤ期はどう乗り越えたら良いのでしょうか?
イヤイヤ期とは個人差にもよりますが1歳半から3歳にかけての時期を指し,魔の2歳児(trouble two)とも呼ばれ,第一次反抗期という時期にあたります。いままでは常に親にべったりと頼り,なんでも受け身でやってもらうのが当たり前だった子どもが「自分で何かをやりたい!」と自我が芽生えてきている時期でもあります。でも,すぐにはうまくゆかずにイライラして,そのイライラを親にぶつけてくるのです。ですからぶつけられた親にとっては頭に血がのぼるということも多いでしょう。「勝手にしていなさい」と言いたくなります。勝手にしてくれと言われることは子どもにとっては恐ろしいことで,親から見放されたのでは?と思うのです。しかし,親にとってはそれが言いたくなる時期でもあります。イヤイヤ期というのは,例えば「◯◯やって」と言いながらやってあげようとすると「イヤだ」と自分でしたがる時期で親としては辟易としてしまいます。
でも,子どもの成長にとって,この両方の気持ちが大事なのです。親の態度として,例えば「やって」と甘えたり頼ったりしてくるときは「よしよし」と可愛がるけれど,子どもが自分でやりたがると「勝手にしなさい」ということになると,その子は赤ちゃんのようになって,何もできませんといって親の懐に入っていなければ愛情をもらえないと思ってしまいます。一方で,親の態度として,子どもがやれたときに「とても良い子だね」と可愛がり,認める反面,「やって」と甘えたときに「もう,大きいから自分でやりなさい」とできる側面ばかり褒めるということだと,子どもは何もかも全部自分でやらないといけないという思いになってしまい,甘えたり,世話してほしいと頼んではいけないと思ってしまうのです。この時期の揺れ動き(親に甘えたい気持ちと自分で自立したいという気持ち)には,このどちらの側面にも愛情をもって接する必要があるのです。ですから,「やって」と甘えてくるときには甘えさせて,「自分でやる」といったときにはその頑張りを認め見守るということが大事です。
③赤ちゃん返りはなぜ起こるのでしょうか?
対応方法はどのようにしたら良いでしょうか?
赤ちゃん返りとは文字通り,幼い子どもが赤ちゃんのような行動をするといった“赤ちゃん”の時期に戻ってしまうことを言います。特に自分に弟や妹が生まれることで初めて子どもは自分に兄弟ができたという現象を目の当たりにします。しかし,小さな赤ちゃんは遊び相手にならないし,親はいつも忙しそうにしています。これまで自分が一番優先に親の愛情を独占できていたのですが,赤ちゃんができることによって「赤ちゃんが寝ているから静かにしていてね」などと言われ我慢するよう強いられ,自分が一番ではないと順位が変わったような気がして納得できないものです。ここで「お兄ちゃん・お姉ちゃんなのに,わがままを言わないの」といった言葉を言われると,ますます駄々をこねたり,すねたりすることになります。それはやがて,トイレにいかない,保育園に行きたくないと泣いたり,歩くのを嫌がりベビーカーに乗りたいと言うなどいろいろな表現をしてきます。これらの行動の背景には「こっちを向いて」と子どもがSOSを発信していると考えられています。しかし,ご家庭に新しい赤ちゃんができるとこういう状態はある意味避けられません。対処方法としては,赤ちゃんがおとなしくしている際にはなるべく子どもが親を独占できる時間を作ってあげましょう。徐々に子どもが満足してくると「赤ちゃん,泣いているよ」といった下の子への気遣いも芽生えてくると思います。
以上,よくある質問を中心に考えてみました。今,子育て中の親御さんはご参考にしていただければ幸いですし,そうでない読者の皆様もこれまでの子育てを振り返り,大変であった時期が,かけがえのない素晴らしい時期でもあったことを思い出していただけると幸いです。
カウンセリングでは,このような子育てのお悩みや,ご家族についてのお悩みなど,こんなことを相談しても良いのか?と思うことであってもお気軽にご相談頂ければ幸いです。
2022/01/27
執筆:臨床心理士・公認心理師 深澤