適切な意思決定支援に関する指針
社会医療法人 加納岩 日下部記念病院
目的
日下部記念病院（以下、当院）では、患者が自分らしく最期まで生き、より良い最期を迎えられるために、本人・家族等の意見を繰り返し聞きながら患者の尊厳を追求し、適切な意思決定支援ができるよう、以下のとおり指針を定める。
基本方針
当院では、人生の最終段階を迎える患者がその人らしい最期を迎えられるよう、厚生労働省「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」等の内容を踏まえ、多職種からなる医療チームで患者とその家族等に対し適切な説明と話し合いを行い、患者本人の意思決定を尊重し、医療・ケアを提供することに努める。
人生の最終段階の定義
- がんの末期のように予後が数日から長くとも2～3か月と予測ができる場合。
- 慢性疾患の急性増悪を繰り返し予後不良に陥る場合。
- 認知症や脳血管疾患の後遺症、老衰など数ヶ月から数年にかけ死を迎える場合。
なお、どのような状態が人生の最終段階かは、本人の状態を踏まえて、医療チームの適切かつ妥当な判断による。
人生の最終段階における医療・ケアのあり方
- 医師等からの適切な情報提供と説明に基づいて、医療チームと十分な話し合いを行い、本人による意思決定を基本とした上で、人生の最終段階における医療・ケアを進める。
- 本人の意思は変化しうるものであることを踏まえ、本人が自らの意思をその都度示し、伝えられるような支援を医療チームで行い、繰り返し患者と話し合う。
- 患者が自らの意思を伝えられない状態になる可能性があることから、家族等の信頼できる者が立ち会うよう積極的に促す。この話し合いに先立ち、本人は特定の家族等を自らの意思を推定する者として前もって定めておく。
- 人生の最終段階における医療・ケア行為の開始・不開始、医療・ケア内容の変更、医療・ケア行為の中止は、医療チームが医学的妥当性と適切性を基に慎重に判断する。
- 医療チームにより、可能な限り疼痛やその他の不快な症状を十分に緩和し、本人・家族等の精神的・社会的な援助も含めた総合的な医療・ケアを行う。
- このプロセスにおいて話し合った内容は、その都度、診療録等に分かりやすく記録する。
- 生命を短縮させる意図をもつ積極的安楽死は、本指針の対象としない。
具体的な医療・ケアの方針の決定手続き
１．本人の意思が確認できる場合
１）本人と医療チームとの十分な話し合いを踏まえた本人による意思決定を基本とする。
２）本人の意思は変化しうるものであり、さらに自らの意思を伝えられない可能性があるため、本人が家族等、自らの意思を推定する者として前もって定め、医療チームとともに繰り返し話し合いを行う。
３）このプロセスにおいて話し合った内容は、診療録等に分かりやすく記録する。
２．本人の意思が確認できない場合
１）家族等が本人の意思を推定できる場合には、その推定意思を尊重して決定する。
２）家族等が本人の意思を推定できない場合には、医療チームが家族等と十分に話し合い、本人にとって最善の方針をとる。
３）時間の経過、心身状態の変化、医学的評価の変更等に応じて、このプロセスを繰り返し行う。
４）家族等が判断を医療チームに委ねる場合は、本人にとって最善の方針をとる。
３．身寄りがない患者の場合
１）本人の意思決定能力や信頼できる関係者の有無等によって状況が異なるため、介護・福祉サービスや行政の関わり等を利用して本人の意思を尊重する。
２）厚労省「身寄りのない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人へのガイドライン」を参考に意思決定を支援する。
４．複数の専門家からなる話し合いの場の設置
本人と医療チームとの話し合いの中で、妥当で適切な医療・ケアについて合意が得られない場合、当院の倫理委員会で方針等についての検討及び助言を行う。
参考
厚生労働省：人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン，2018．
厚生労働省：身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン，2019．
附則
2024年6月10日 作成
適切な意思決定支援に関する指針についてはこちらよりダウンロードいただけます