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大人の発達障がいについて

 近年、「自分は発達障害かもしれない?」と悩み、初めて医療機関や相談機関に訪れる方が増えているようです。実際に厚生労働省の発表によると、全国の発達障がい者支援センターが相談や支援を実施した19歳以上の件数は、センター開設当初の05年度に約3100件だったのが、10年度には6.5倍の約2万件と年々増加しているようです。そこで、今回は発達障がいの中でも、特に大人の発達障がいについてご説明していきたいと思います。

1.大人の発達障がいとはどのようなものでしょう?

 近年、発達障がいに関する情報が様々なメディアで取り上げられ、多くの方が“発達障がい”という言葉をお聞きになったかと思います。そのような状況のなかで、“自分にも当てはまっているかも?”と感じ、医療機関や相談機関を訪ねる方もいらっしゃいます。

 ところで、発達障がいと聞いて、どういったものを想像するでしょうか?成長していないこと?あるいは発達が遅れている?どういうものでしょうか。

 発達障がいの特徴としては、一般的に発達のアンバランスさが乳幼児期からみられますが、その程度が強くない場合、または他の特有の性質(特性)で補われる場合、周囲の環境や人間関係によってそのアンバランスさが気づかれないこと、あるいは問題がカバーされていた場合があります。このようなケースでは、学童期を経て成人期になったときに様々なきっかけから初めて社会適応上の困難さがわかることがあります。こういった場合を“大人の発達障がい”と表現します。

2.大きく3つの特性に分類されます。

 発達障がいは、行動や認知の特性によって、“自閉スペクトラム症(ASD)”、“注意欠如・多動症(ADHD)”、“限局性学習症(SLD)”の3つに大きく分類されます。これらは重複することもあり、人によっては、複数の特性を併せ持つ場合もあります。また、ASD、ADHD、SLDなどの一つ一つの特徴はそれほど顕著でなくても、複数併せ持つことによって社会適応上の困難さが重なり合い、苦しんでらっしゃる方も多くいるようです。大人の発達障がいの場合には、子どもの頃に人付き合いが多少苦手で変わっていると思われても、例えば、成績が良かったり、大人しいということで大きな問題とならなかったり、周囲の友達がカバーしてくれたりと気づかれないことが多々あります。しかし、社会にでると同僚や上司など社会上の付き合いが増え、また、学生の時のようにカバーしてくれたり、助けてくれる人ばかりとは限らず、複雑な人間関係になることが多く、興味のない仕事でも行わなければならなくなるなど、徐々に人間関係や仕事に困難さを抱えて初めて気づくといった特徴があります。

 以前、発達障がいは親の育て方やしつけ、ワクチン等が原因といわれていた時期もありますが、そのようなことは全くありません。詳しい原因についてはわかっていませんが、脳の神経伝達物質や前頭前野を含む脳の働きの偏りといわれています。

3.社会生活に及ぼす影響に応じて相談しましょう。

 大人の発達障がいの場合、その人の特性がどの程度社会生活に影響を及ぼし、困難をきたしているかということが重要です。発達障がいがあったとしても、その特性を理解し、不得手な側面があっても、得意な面を生かしている場合には問題ないかと思います。

 例えば、頑固おやじのいる○○料理屋さんなどはその良い例かもしれません。多少、コミュニケーションが不得手で接客が苦手であったとしても、味がよく、お客さんが来て、経済的に自立し、自分も好きなことにとことんこだわり、さらに没頭でき、ご自身の能力を十分に発揮できるという状況などは良い例で、こういう場合には問題はありません。

 しかし、必ずしも、得意な面を活かして就労できるとは限らず、これまで述べてきたように社会生活上の困難さが生じている場合には、医療機関、相談機関に受診や相談をしていくと良いかもしれません。

 発達障がいの有無に関しては、成育歴や生活歴、社会適応上の困難さなどを伺い、必要な心理検査などを実施する場合があります。治療法は、各種検査結果からご自身の得意な面や不得手な面を理解していき、考え方や思考パターンの特徴を把握するなど認知行動療法などの心理カウンセリングやSST(Social Skills Training)といった治療教育が行われることがあります。また、人間関係のトラブル等による気持ちの落ち込みなどの場合には、薬物療法を用いることもありますが、発達障がいは薬物によって根治することはありません。

 

 これまで説明してきた特性が少しでもあるからといってすぐに発達障がいということではなく、個性の範囲内という場合も珍しくはありません。詳しくはかかりつけ医や相談機関にご相談いただけると良いと思います。

 

 

執筆:臨床心理士・公認心理師 深澤

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