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小説・映画などで描かれる精神科の病気

みなさんは、精神科の病気というと、どのようなイメージがありますか?

最近は、精神科の受診に対し、大分、敷居が低くなったといわれますが、一昔前は精神科の病気に対してあまり良いイメージを持っていなかった方が多かったのではないかと思います。

現在は、精神科の病気としてアルツハイマー型やレビー小体型、前頭側頭型、脳血管性などの認知症も治療の対象となっていますが、私の中で精神科の病気というと統合失調症が第一に考えられます。統合失調症は精神科の病気の中で、誰にでもなりうる可能性がある身近な病気のひとつではないかと思います。

はじめに、20世紀以降の日本における精神科の病気の歴史的な変遷について簡単に眺めてみたいと思います。

統合失調症は、1937年に日本精神神経学会が“Schizophrenie”を「精神分裂病」と訳し、2002年に現在の名称に変更されるまで、長年、その名称が使われてきました。また、精神分裂病という名称のインパクトの強さから誤解を招くようなことがありました。現在は、新しい治療薬や治療方法が開発されたこと、この病気についての認識が広まったため以前に比べると軽症化されているように感じます。

1990年代になるとボーダーライン、いわゆる「境界性人格障害」という疾患が精神科領域で大きく取り上げられるようになりました。1999年には疾患の啓発のため「うつはこころの風邪」というコマーシャルがテレビで流れると、2000年代初めから「うつ病」が増加傾向となりました。2010年代になると「注意欠如・多動症(ADHD)」、「アスペルガー症候群(ASD)」などの発達障害を疑って受診される方が増えています。不思議なことに時代の変化やその時々の社会・経済的な状況により、増える疾患があるようです。

現在では、以前と違いインターネットが普及したこともあり、若い方などは受診する前にインターネットで調べ、それぞれの病気についてのチェックリストを用い、いくつかの症状が当てはまると、「私は○○病ではないか?」、「私は○○障害ではないか?」と思い悩んで受診される方が増えているように感じます。

次に精神科の病気を扱ったあるいは登場人物に精神科の病気が描かれているような小説や映画をいくつかご紹介したいと思います。これらの作品は、精神科の病気を知る上では参考になることもありますが、それは、それぞれの病気のごく一部を描いたものであり、すべてではないことをご理解ください。

統合失調症について描かれたものとして、文学作品では、村上春樹氏の『ノルウェイ森』があります。おそらくヒロインの直子は、統合失調症と思われるような精神疾患を患っていると思われますが、小説の中ではかなりロマンチックな描かれ方がされています。また、同氏の作品の『スプートニクの恋人』というものがあります。この作品は、私が大学院時代に精神医学の授業を担当されていた教授から「統合失調症の病理についてわかりやすく知ることのできるもののひとつ」として紹介されたものです。映画では、アメリカに実在した天才数学者を描いた『ビューティフル・マインド 天才数学者の絶望と奇跡』という作品があります。

 

発達障害について描かれたものとしては、漫画では、戸部けいこ氏の『光とともに…〜自閉症児を抱えて〜』という作品があります。この作品は連続ドラマとしても放送されています。映画では、アメリカの映画の『レインマン』、中国の映画の『海洋天堂』、韓国映画の『マラソン』などの作品があります。また、最近では、イギリスのダニエル・タメット氏の『ぼくには数字が風景に見える』という作品やニキリンコ氏、綾屋紗月氏など当事者の方々によって書かれた書籍を手に取ることが出来ます。

  うつ病について描かれたものは、私の中でしっくりとくるものがなかったので、最後に精神科病院を舞台に描かれた小説として多島斗志之氏の『症例A』という作品を紹介して終わりにします。

 

繰り返しになりますが、これらの作品はあくまでもその病気や障害の一部分が描かれたものになりますので、それらを知るためとご理解して、見て頂けると幸いです。

 

【小説】

『ノルウェイの森』          村上春樹著        講談社文庫

『スプートニクの恋人』        村上春樹著        講談社文庫

『ぼくには数字が風景に見える』    ダニエル・タメット著   講談社文庫

『症例A』              多島斗志之著       角川文庫

 

【漫画】

『光とともに…〜自閉症児を抱えて〜』 戸部けいこ著       秋田書店

 

【映画】

『ビューティフル・マインド 天才数学者の絶望と奇跡』 

販売元‏ : パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン

『レインマン』 販売元‏ :‎ ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社  

『海洋天堂』  販売元 ‏: キングレコード            

『マラソン』  販売元 :‎ アミューズソフトエンタテインメント

 

執筆:臨床心理士・公認心理師 清水 

更新:2022.08.03

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